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浜松の自然

海霧

001.jpg落石岬や浜松をはじめとする根室半島の独特の自然を創り出している源は、この海で発生する海霧と考えてよい。海霧は陽射しを遮るだけでなく、冷たい空気を半島まで運び気温を冷涼なものとする。海抜の低い丘陵が続く半島なのに植生でいえば高山・高原系の植物、地域を特徴づける北方系の植物が多く見られる。
気候帯:ほぼ亜寒帯
北方系また特徴的な植物:
キヨシソウ・トモシリソウ・チシマフウロ・シベリアシオガマ・ネムロシオガマ・シコタンタンポポ(ネムロタンポポ)など
高山・高原系の植物:ハクサンチドリ・クロユリ・ツリガネニンジンなど

【海霧と産業】
また海霧はこの地の産業にも影響を与えた。明治時代の北海道開拓期には根室でも畑作が試みられたが、養分低い土地と何といっても寒すぎるといっていいほどの冷涼な気候に不作が続き、畜産(馬・乳牛)に転換して行く。ここの気候は酪農には最適で、霧に含まれる海からミネラル分により良質な牧草が育ち、何より冷涼な環境は乳牛の健康維持には欠かせなく、それは乳質にもよい結果を現してくれている。海霧と酪農との関係は非常に密接だといえる。
 その霧がどうして発生するのかというと、寒流の千島海流と暖流の日本海流が根室半島沖を含めた道東沖でぶつかることによって起こる。暖流の日本海流とともにやって来た南の暖かな空気には、たくさんの水蒸気(気体状態の水分)が含まれているが、寒流の千島海流上の冷たい空気と出合うと急激に冷やされ、空気中の飽和水蒸気量(水分を保持できる量気・温が高いほど大きい)の値が落ち、行き場のなくなった水蒸気は気体から個体、つまり霧となって現れる。

 この現象が海の上で起きている時、海の中では暖流と寒流がぶつかっているのが、それは容易に交わるものではなく寒流は針路を変え海底方向に沈み込む。その流れは海底に養分として蓄えられている窒素やリンを多く含んだ海水を海面へと押し上げる。これが湧昇流で、この養分の豊富な海水は太陽光により植物性プランクトンを大量に発生させ、食物連鎖の流れとして多くの魚介類を育てている。それは多くの海鳥やアザラシなど海獣の仲間、クジラなどが生息でき、多くの人が漁業を営んでいける海を育てている。

花園効果

hana.jpg自然草原等に馬などを放牧すると、好んで採食するイネ科・カヤツリグサ科の植物の草丈が低くおさえられる(食圧)。それによって本来ならそれらの陰になってあまり勢力を維持できないフウロソウ科・キク科・ゴマノハグサ科・キキョウ科・アヤメ科・ラン科などの目で見て鮮やかな花をつける植物たちが、適度に生茂ることができるようになり、開花時にはその花が目立つようになる。

まるで花畑のようになることから専門的用語で『花園効果』と呼ばれる。

ユルリ・モユルリ島

001.jpgユルリは、アイヌ語で鵜の鳥。(本名はウリリ)モユルリは、鵜のいる小さな島という意味。
ユルリ・モユルリ島の西側には、七つ岩と呼ばれる7個の岩がある(釧路沖地震で岩の1つは崩壊している)

ユルリ・モユルリ島は、断崖に囲まれた平坦な無人島である。明治初期には、帆船の風待ちの待機場所や避難場所として利用されていた。

崖地は国内有数の北方系海鳥の営巣地となっており、北海道の天然記念物に指定されている。一般人の立ち入りは規制されているが、エトピリカのような貴重種やラッコ、アザラシなどが繁殖しているため、周辺環境の保全が必要とされている。

【エトピリカがいなくなったわけ】

・昔は、昆布を採取する時期にユルリ・モユルリ島に住みこんで漁業を行っており、漁師達は網にからまったエトピリカを食べていた。

・冬になると流氷ができるため、流氷の上を浜から渡ってきたたきつねが食べていたという話もある。

シンコワラ

004.jpg漁師達はこの森をシンコワラと呼んでいる。シンコ原(トドマツ林)語源のシンコはアカエゾマツ(=ヤチシンコ)からきていると考えられるが、この場所にアカエゾマツは1本(程度、見た限り)しかない。

明治時代にアカエゾマツからトドマツに遷移した可能性は低く、樹皮がアカエゾマツのようなので喩えまたは通称として、そう呼ばれているのかも知れない。

各トドマツの径はあまり太くないがその特徴的な樹皮が、すでに鱗片状に剥離していることから樹齢はかなり高いと思われる。幹の湾曲や樹形の状態から風雪の影響をかなり受けていることが想像できるので、それが成長の遅い要因の1つと考えられる。

トドマツは山地を中心に海岸まで生える木であるが、このシンコ原のような風雪の強いところに群落をつくっているのは珍しいと考えていい。(ただし、北海道開拓時代からの伐採が進み、現存している場所が少ないということもある)。

浜松の花

気候が冷涼であるため、標高が低い丘陵地でも貴重な高山植物を確認することができる。

エゾフウロ
エゾフウロ
(フウロソウ科)

2

エゾノコギリソウ
エゾノコギリソウ
(キク科)
エゾリンドウ
エゾリンドウ
(リンドウ科)
ヒオウギアヤメ
ヒオウギアヤメ
(アヤメ科)
ハクサンチドリ
ハクサンチドリ
(ラン科)

オオバナノエンレイソウ
オオバナノエンレイソウ
(ユリ科)
クロユリ
クロユリ
(ユリ科)

エゾクサイチゴ
エゾクサイチゴ
(バラ科)

ユキワリコザクラ
ユキワリコザクラ
ユキワリコザクラ

トウゲブキ
(キク科)


ネジバナ